top of page
中澤 圭
第36回現代パステル協会展

『見知らぬ感情』 Sur ce sentiment inconnu
私たちは様々な感情を、その名としては知っている。例えば、悲しみや苦しみ、時には喜びとして。だが、私たちはそれらと、本当に出会っているだろうか。知っていることと、出会っていること。その懸隔は大きい。
まるで鏡の向こう側のように。あるいは、こう言い換えられるかもしれない。すでに出会っている何かと、あるいは誰かと、私たちは何処かで巡り合う。すでに出会っていることを知らずに。その時、その見知らぬ感情に、ようやく名が与えられるのだ。それを人は、悲しみや喜びと呼ぶ。そのような出会いを、たぶん私たちは繰り返しているのだろう。ホイッスラーの「白衣の少女」は、そのような見知らぬ感情との、出会いの瞬間を捉えた作品と見た。それを手に持つ美しい女性もまた、来るべき出会いの日を、鏡の向こうで震えて待っている。
現代パステル協会
bottom of page